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漫画『春の呪い』ネタバレ感想 亡き妹の婚約者と恋愛。解けない罪悪感への答えとは?

こんにちは、ににゃです。

ずーーっと気になっていた『春の呪い』をやっと読了しました。

同作者様の『来世は他人がいい』をジャケ買いしてファンになってから、ずっと読みたいと思ってたんですよね。

評判通りとっても面白かったです!暗めの内容ではあるのですが、ただ暗いというだけでなくキャラクターの心情がとても丁寧に描かれていて引き込まれる作品でした。

なかなか答えの出ない問題に、こういう決着をつけるのか!と終わり方がとても好きでした。


春の呪い: 1 (ZERO-SUMコミックス)

あらすじと基本情報

作者小西 明日翔
出版社一迅社
巻数全2巻

ざっくりいうとこんな漫画

  • 妹が亡くなった後、妹の婚約者と付き合う主人公
  • 罪悪感と葛藤に向き合う姿を描いている
  • キャラクターの心情描写が丁寧

『春の呪い』のあらすじ

19歳の妹・春を病気で亡くした主人公・夏美。

妹の葬儀後、婚約者だった冬吾は、夏美に「付き合おう」と提案します。

夏美はあることを条件に冬吾との交際を承諾しますが、

それは『春と冬吾が二人で行った場所に連れて行って欲しい』という条件で・・・。

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同作者様の『来世は他人がいい』もおすすめです!

極道の孫・吉乃は、同じく極道の息子・霧島と婚約者することに・・・。

主人公・吉乃(高校生)のアネゴっぷりと、ドSかドМか分からない頭のおかしい(褒めてる)霧島のコンビが最強すぎる!

↓ここからは超個人的な感想&ネタバレありなのでご注意ください。

春の呪い』の感想(ネタバレあり)

面白かったポイント

  • 暗いけど暗すぎない
  • 心情描写が丁寧
  • 難しい問題に対しての決着の付け方が良い
  • 都合のいい展開や都合のいい救いが無くて良い

主人公・夏美の危うさが魅力的

作品の感想を考えたときに、まず最初に出てきたのは、主人公・夏美が好きということ。

夏美の第一印象は、元気でさばさばした性格で妹想いの良いお姉ちゃんでした。

その印象はもちろん良かったのですが、それ以上にぐっと引き込まれたのは、1話の最後の方で電車の来る踏切に入って行こうとした時。それまで明るく振る舞っていただけに、よけい瞬間的に、衝動的に自殺しようとしたように見えました。

そのギャップによって、夏美の危うさがすばらしく的確に描かれているなと。精神的ダメージが表面に見えない人ほど、それが爆発した時に危険なんですよね。

しかし衝動的にとは言うものの、夏美の自殺しようとした行動に破綻は無くて、それに至る理由はしっかりしているんです。

だから、「今まで笑ってたのに突然自殺しようとした危ない人」ではなく、理由があってそういう行動に走ってしまった「夏美」の危ういキャラクター性を好きになれたのだと思います。

妹の婚約者と付き合うという行動

最初に「妹の婚約者と付き合う」というあらすじを見た時、冬吾は妹からどうやって姉の方に恋愛感情をシフトしていくのだろうか?と思っていたのですが・・・読んで見るとちょっと違いました。

婚約者だけど、冬吾は春を愛してはいなかったのですね。冬吾は最初から夏美の方が気になっていたんです。

とはいえ、春が亡くならなければきっと冬吾と夏美が結ばれることはありませんでした。そりゃ夏美と冬吾は罪悪感のオンパレードですよ。

夏美は交際する条件として、冬吾に「春と一緒に行った場所に連れて行って欲しい」と言います。

夏美は、冬吾の一緒にいた時の、自分の知らない春を知りたかったのでしょうか。

それもあると思うのですが、夏美の方も冬吾を気になっていたのかもしれないとも思います。

そもそも、春のこと以前に、夏美と冬吾は性格も家庭環境も違って一見相性が良いようには見えませんよね。冬吾は夏美と話していて、イラッとする様子をたまに見せますし。(生活レベルが違うという話もありました)

それなのに、なんとなく2人が惹かれ合っているのを感じるのが不思議。不思議だけど、お似合いだなあと思ってしまうんです。

案外、自分と正反対のもの、足りないものに強烈に惹かれたりするのかもしれませんね。

都合のいい「許し」が無くて良かった

冬吾は「死んだ人間は悲しまない」と言います。(全く何も感じてないわけではないと思いますが)

だけど、春が全てだった夏美は春が恨んでいるのではないかと罪悪感に苛まれています。

どっちが正解かなんて分かりません。

死んだ人間が何を思うのか。死んでみないと分からない、そう作中でも言われていますが本当にそうだと思います。春に対しての罪悪感も、生きている側の夏美が勝手に感じているだけなのかもしれません。

だから結局、春というより自分との折り合いですよね。一生答えの出ない問題に対してどう向き合うのか、それがこの作品の核でしょう。

4話で、春が生前に更新していたと思われるSNSが出てきます。

正直、そのSNSで春の「許し」が書かれていた場合は、個人的に興ざめしていたと思います。

例えば、「自分のことはいいから、お姉ちゃんは幸せになって」なんて書かれていたら、この作品は全く違うものになっていたと思います。その場合はもう問題に対して答えが出ちゃってますもんね。

SNSには春の本音がつづられていました。

「どちらか連れていけるならお姉ちゃんを連れて行く」

「お姉ちゃんを地獄に道連れにしてでも、冬吾さんには生きて幸せになって欲しい」

そんな内容でした。

結局、春が選んだのは冬吾の方だったわけで、春に尽くしてきた夏美は報われないです。

さらに今まで感じていた罪悪感にダメ押しされたわけですもんね。もし幽霊や死後の世界があって、春が夏美を見ていたとしたら、「許さない」と言っているようなものです。

だから、これは「許す」「許されない」の物語ではなくて、そこが論点でも着地点でもないんでしょう。

許されてハッピーエンドの話ではなくて、罪悪感に苦しみながらも変化していく物語なのかなと思いました。

夏美と冬吾に訪れた変化

前の項目で書いたように、春が亡くなってしまった以上何も答えは出ないので、春から許されることがこの作品の着地点ではないと思います。

では、どうやって物語に決着をつけたのかというと、「夏美と冬吾の2人の変化」だと思います。

この作品は、春への罪悪感とともに、家族というしがらみからの脱却もテーマにあるように思います。

夏美と冬吾は、それぞれ家庭環境は違えど問題を抱えていて、特に夏美はその中でも春を支えることで自分の存在を保っていた節がありました。

しかし、夏美と冬吾が一緒にいることで、夏美は春以外の人を好きになることができ、冬吾は夏美を選ぶことで、決められた人生のレールからはずれることができたのです。

一緒にいることは罪悪感も生むけど、それと同じくらい2人に新しい変化をもたらしました。

罪悪感に対する答えは出ていないのに、夏美と冬吾の変化を上手く着地点にすることで、モヤモヤすることなく読み終えることができました。

感情と理性の間がちょうどよい

ふわっとした話でなく、なんとなくリアリティを感じるんですよね。

時々セリフやモノローグのテキスト量が多めになる時があって、しっかり説明を入れてくるんです。登場人物の設定、育った環境、お見合いの理由、家業の話など、ひとつひとつに理屈を持たせている感じを受けました。

そのためか、物語自体は登場人物の感情や葛藤で動いているのに、全体的にぼんやりした印象にはならないんですよね。全2巻で決して長くはないのに、物語としての存在感は大きいです。

あとは、夏美と冬吾が現実的なところも個人的に好きなポイントでした。夏美の、冬吾と結婚したら生活レベルを合わせないといけないという話とかですね。

夏美と冬吾は最終的に家出のような形になるのですが、勢いで行動しているように見えて、実は冷静にこれからの生活をみすえている様でした。

若気の至りで勢いにまかせて、家族を捨てて2人で生きて行く!家出してやる!

みたいな流れでもいいんですが、そこをぐっと現実に引き戻すような感じがとても好きでした。

最終話にある「分別がある分それよりタチが悪いな」という冬吾のセリフに全てが集約されているようでした。

さいごに

テーマは暗めですが、必要以上に暗くなったり鬱になったりはしませんでした。

その後の夏美と冬吾の生活がとっても気になります。きっと合わなかったりケンカしたりもしながら上手くやってるのではないかな・・・と。

全2巻で読みやすいので、ぜひぜひ色々な方に読んでいただきたい作品です!